
[ふしけんアーカイヴス:特別取材記]
フィリピン心霊治療第三次調査
森田 健
私はフィリピンで、発信機を体内に入れる実験を三人にやってもらいました。
その中の一人は電波が出っぱなしだったのです。そしてヒーラーの動きに従って電波の揺れが起こりました。探るとそれは彼のポケットの中から出ていました。これは明らかに彼が隠してしまったということです。電波ですからどこに隠されても分かります。
しかし他の二人の時は最初と同じように電波は途絶えました。その時、発信器はどこに行ったのでしょうか?
ここで体外離脱との関係が浮かび上がらないでしょうか?
ひょっとすると発信器は別の世界に行ったのかも知れないという仮説が浮かびます。
これが本当なら、彼らが出す臓物や血も、別の世界から呼び寄せていると考えることも可能です。だとすれば血を分析した結果、それが人間の血でないからといって「黒」だということにはならないのです。
私はフィリピン現象が本物であることの実証を得たくなりました。それでフィリピンの新聞に広告を出しました。「ウォンティッド! 調査協力者募集」という広告を、マニラビルティンという新聞にでかでかと出しました。
私は不思議研究所をやっていますが集まる情報には限度があります。読者からの情報のほかはこうして新聞広告で集めます。日本でも時々夕刊フジに三行の広告を出しています。
フィリピンでは二十人程から応募があり、電話面接の末、エドウィンというヒーラーのところに向かいました。
なんと彼はフィリピン心霊治療を世界的に有名にしたトニーという人の甥でした。
アンクル・トニーの手伝いをしているうちに手が自然と体内に入るようになったそうです。
ここでお金の話をしましょう。
今まで紹介したヒーラーは患者さん一人一回につき百ドル取ります。これでは現地の人は高くて行けません。ほとんどが外国人を対象としているのです。
しかし応募してきたエドウィンはドネーション(寄付)というシステムをとっていました。これは患者さんが勝手にお金を決めるステムです。それも隣の部屋に寄付箱があるので誰が幾ら入れたのか、まったくわからないようになっています。そんな彼に私は会うことになったのです。
私は彼にフィリピンの現象が本物であることの証拠がほしいと相談しました。すると彼の意見はこうでした。
「体内に物を入れるとすればそれはウイッチ(小悪魔)の手を借りないとできない。
ウイッチの手を借りて入れた物はレントゲンで捕らえることは難しい」
それでも彼は挑戦しようとしました。
入れ込みに使うのは金属リングです。これは入れ歯の治療に使うもので、前述の西村先生からお借りしました。プラチナと金の合金で、価格的にはとても高いのです。お金を払うと言っても、西村先生は「真理をおみやげにください」と言うだけで受け取りません。ありがたい限りです。
私はこれを入れ込む時、正直「どうかな・・」と思いました。つまり自分の生命の危険を初めて感じました。なぜなら彼は三次元的に入れようとしているのです。入れ込む位置が胃の隔壁だったら胃に穴が空いてしまいます。今回は何も目新しいことはしないと家族に約束してきたので胸が痛みます。しかし私はエドウィンという男は波動の高いヒーラーだと思っていたので、とにかく彼に体を預けようと思いました。
彼は二日間ほどトライしました。そして言ったのです。
「やはり無理だ。入れると向こうの世界に行ってしまう。こちらの世界に入れるのはやはり無理だ」
この言葉を聞いてホッとしました。彼は言いました。
「神の力をもってしては、出すことしかできない。出すことならどんなところからでも、それが何であってもできる」
結局、金属リングを三次元的に私の体内に入れ、レントゲンで証拠を撮り、それを三次元的以外の方法で出してもらうことになりました。
挿入に使用したのはやはり入れ歯の金属リングです。
三次元的な方法、つまりそれを飲むかどうするかという問題ですが、病院でレントゲンを撮って戻ってくるまでに一時間はかかるでしょう。その間に金属が内臓のどこかに引っかかり、生命に危険が及ぶかも知れません。そのほかの方法ということで、結局お尻からできるだけ内部深く挿入することになりました。
挿入はエドウィンの助手が担当することになりました。
私は偶然にもその日の朝、一生に一度というくらい立派なウンチを、これでもかと出してきたのです。このときばかりはシンクロニシティに感謝しました。私のお尻の中はきれいになっていたのです。
しかし挿入する時にあげた悲鳴は、五十メートル先に止まっていた車の運転手にまで届き、彼が心配して飛び込んできたくらいです。
私は顔をゆがめながら
「ノープロブレム(大丈夫)」
と答えました。
エドウィンの助手の手首がすっぽりお尻に入っていた様子でした。出血で膝までおろしていたパンツが真っ赤になりました。
そうだ、ラマーズ法だ。
私は出産を楽にするための呼吸法を始めました。
フーフー、ヒーヒー
すると突然痛くなくなりました。呼吸法が効いたのかと思いきや、彼が腕を私のお尻から抜いたからでした。
彼はリングの挿入が終わると、今度は沢山の綿を挿入しました。途中で出てこないようにです。もうどうにでもなれです。そして病院に駆けつけました。帰るとさっそく聞かれました。
「ケン、調子はどうですか? さっき挿入した金属リングはちゃんとレントゲンに写っていましたか?」
調子などいいはずありません。
「はい、鮮明に写っていました。しかし挿入するときは本当に痛かったです。ほとんどあなたの助手の手がそっくりそのまま私の肛門に入っていました」
「あのくらい奥深く入れないと、トリックだと思われる可能性が残るからです。肛門の近くに位置したものは、簡単に出すことができると思われるからです。しかしあれだけ深く入れればそんなこともないでしょう。さあ、出しましょうか?」
「出すときも、あんなに痛いのですか?」
「まったくその逆です。さあいきます」
私は少しばかり身を堅くしました。体内に挿入した金属リングを出すのですから、簡単なわけはありません。
エドウィンは深呼吸をすると、私のお腹の上に軽く手を置きました。そしてちょっと押すようにした瞬間でした。お腹の上に、まさにお尻から入れたはずの金属リングがひょっこりと出てきたではないですか。私は挿入してから一度もトイレに行っていません。
金属リングが出てきたお腹の部分に傷はありませんでした。ほんの少しだけ血がついて出ましたが、痛みはまったくありませんでした。
私はベッドから降り、再度病院に駆けつけ、二度目のレントゲンを撮ってもらいました。そこにはもうリングは写っていませんでした。
金属リングはどこか別の空間を通らなければ出てこられるはずがありません。
別の世界とはどこにあるのでしょうか?
病みつきになりそうなリング入れについては、確かにフィリピンの現象の一面を証明してはいますが、本質的な解明にはなっていません。むしろ発信器の消失のほうが近いと言えるでしょう。
発信器挿入ではもう一つのエピソードがあります。
心霊治療のできる神父さんに発信器の挿入を頼んだのです。彼は危険だというのでそれを綿に包んで入れました。しかし次の日出すと発信器だけ出てきて綿が出なかったのです。
彼は「きょうはエネルギーを使い果たしてしまった。明日また来てくれ。綿を出してあげよう」
私はその足でロジータという別のヒーラーのところに行きました。すると
「なんであんたのお腹にこんなものが入っているんだい」
とびっくりした顔で綿を出してきたのです。
私もびっくりです。まさか別のヒーラーが出すとは思ってもいませんでした。
私は発信器だけ出した神父さんに、次に行くヒーラーの名前を告げてはいません。連絡をとったとは考えられないのです。
この時も発信器はお腹に入ったとたんに電波は止まり、出てきた時に電波は再開しました。発信器も綿も超空間に行ったとしか考えられないのですが、それらはヒーラーが変わっても出せるものなのでしょうか。
そこは無重力
フィリピンの心霊治療は癌などを劇的に治すケースが非常に多いのです。その秘密が発信器の行った別の世界に隠されているかもしれないと思い、もう一つの実験器具を用意しました。水に片栗粉を混ぜた液体を、お弁当に入れる小さなお醤油入れに入れて、私の体内に挿入してほしいと頼んだのです。もちろんこれはウイッチ(小悪魔)経由でいれてもらうのです。つまり別空間に行くので生命の危険はありません。
片栗粉は粒子の細かい物質ですが水に溶けることはありません。そして一度沈殿すると、容器をかなり強く振っても白濁しません。
私はそれをお腹から挿入してもらうと三十分ほど安静にし、そして取り出してもらいました。
その瞬間に見ると、片栗粉はほとんど沈殿していませんでした。沈殿していないということは、お醤油入れが行った世界には重力がないということかも知れません。但し、そう断定できないのは、向こう側の世界が回転し続けているなら沈殿もしないからです。いずれにしても、私のお腹に入っていたら、安静にしていたので沈殿するはずです。さらにヒーラーがポケットの中に入れていても、沈殿しているはずです。
だとすれば向こう側の世界には重力が無いという仮説が有力になります。
では向こう側の世界とは、よく言うところの高次元なのでしょうか? つまり四次元や五次元なのでしょうか?
私は結局、半年間で四回フィリピンを訪れました。今度こそは解明できるのではないかという期待をよそに謎は深まるばかりです。どうすれば解明できるでしょうか?
そんな謎を追っているうちにもう一つ別の謎に遭遇することになりました。
私は一六人のヒーラーから手術を受けましたが、彼らの出身地はパンガシナン県オルタネート村というところで、きわめて狭い地域だったということがわかったのです。ほとんどすべての心霊治療家はこの村の出身なのです。私はこの村を訪れました。
村のヒーラーはタダ同然で治療しています。エドウィンと同じくドネーション(寄付)箱がありまして、患者は各自五十円くらいを募金しています。ハンバーガーが八十円なので、それより安いのです。これでトリックをするでしょうか?
村をまわっているうちにもう一つ、おもしろいことがわかりました。この村は単一宗教だったのです。
一八〇〇年代にアラン・カルデックというフランス人が打ち立てたユニオンエスペラティスタ(心霊主義)という宗教です。カトリックを基本にしていますが、教会にはキリストの像とか十字架はありません。そういうものは各自の心の中にあればよいとしています。
ただ、星が一つ描かれた旗が一枚ぶらさがっているだけです。キリストが誕生したときに東の空に上がったという星を描いています。十字架は死のイメージがするというのです。
ここでは神父さんやシスターがヒーラーを兼ねています。ミサのあとで祭壇の脇のベッドで治療をするのです。
シンプリッシオという神父さんは心霊注射が得意でした。離れた場所から注射をするまねをすると、本当に痛いのです。ある患者さんは重病のため、この注射さえも直接するのはきついので、腕に紙を乗せてしました。すると紙にパチンと穴が空いたのです。
エスターという若い女性のシスターはエクソシストのように大声を立て、髪を逆立てて異様に変身しました。何かの霊がのりうつる感じです。ただし、私を治療した直後にまた大声でわめき、髪が逆立ったと思ったら、憑依がとけてしまいました。患者さんが残っている状態で憑依がとけるのはまれなことだそうです。私は彼女が治療中、ずっとこう思っていました。
「モンロー研究所で体外離脱したら、この人に憑依している霊に会ってやる」と。
彼女が祭壇の上で変身するシーンは実に見応えがあります。それも黒装束ではなく短パンにTシャツという出で立ちでのそれは、逆にすごみさえ感じさせます。
そう言えばジュン・ラボも治療に入る直前に表情が変わり、何かにのりうつられた様相になります。心霊手術という名前の通り、これらは霊現象に関係するのでしょうか?
ユニオンエスペラティスタという宗教を調べていくうちに面白いことがわかりました。この宗教はフィリピンとブラジルに布教され、ブラジルにも心霊手術をする場所があったのです。
ブラジルの場合はとりついている霊がドクターフリッツだと名乗っているらしいのです。生前が医者だったこともあり器具を使って手術をするそうです。さらに彼は世紀末の危機を予言しているらしいのです。これらは本当でしょうか?
疑問が生じると私は自分で確かめたくなります。というわけでブラジル行きの飛行機に飛び乗ると、私はドクターフリッツのいる診療所に行くことになりました。
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