[ふしけんアーカイヴス:特別取材記]

僕は超能力猫のサブロー君

森田 健



 今日のお母さんは忙しそう。仕事から帰ると急いでお昼ごはんを食べている。いつもは僕を遊びに出してくれるのに、忘れているのかなぁ。今日は僕も朝から目をひっかいちゃって、みんながかわいいと誉めてくれるまん丸おめめが台無し。こんな顔でお外に行くのもいやだったから、ま、いいけどね。でも、なんだ? 何かあるのか今日は? また、取材か?
 あっ! お母さん出かけちゃう。自転車でどっか行っちゃうぞ。お仕事に戻っちゃうんじゃないよねぇ。やっぱり今日はお外へ出してもらえないんだ。しょうがない。じゃぁ、僕はコタツの中にでも入っているか。・・・コンセントが抜けてるけど・・・・ネ。ウトウト・・・
 あれぇ、何だか頭の上が騒がしい。お客さんだぁ。お母さんがお客さんを連れて来たんだ。また、僕の事話してるぞ。そんなに誉められても… 確かに、僕はヒトリで何でも出来るけど… 自分のご飯は自分で用意するし、トイレの始末はするし、おまけに、お母さんのお手伝いだってやっちゃうんだ。お風呂の水の見張り番なんて、得意中の得意。いい頃合を見てお母さんに鳴いてお知らせ。毎日、マッサージもしてあげるんだよ。けっこう気持ちいいってわが家じゃ評判さ。お外に出してもらう時だって、お母さんのお仕事の昼休みが終わる時間にはちゃーんと帰って来るんだ。みーんな偉いって言うけど、イマドキのネコはこのくらい自立してなくっちゃぁ、なんて無理か?!
 お休みの日、公園に行くと野球仲間だっていっぱいいるんだ。けっこう守備範囲が広いんだよ、僕。ボールがとんでもないところへ行っても、絶対見つけてくるんだ。今まで、わからなかったことなんて、1回もないよ。これも僕の自慢さ。ちょっと言い過ぎたかな。
 お客さん、そろそろ、僕がどこにいるか気になってきたみたいだぞ。僕はココ。アナタの足モト。
 「おコタツの中にいるんですよ」 お母さんの声。アッ! お母さんの手! 引っ張り出されちゃうー。
 なーんだ。やっぱり取材だった。また、僕を撮るの。今日はダメだよ。目がさ、開かないんだよ。“片目のサブロー”になっちゃってるんだ。カメラに正面の顔なんて出せないよ。お母さーん、ハンサムな時の写真見せてあげてよ! えっ!ぜひ今日の写真も撮りたいって。ぜひ、ぜひって言われても。それじゃ勝手に撮ってよ、なるべく右側から。右側からね。いやだ、だっこなんかして、僕をどーしようって言うの。おまけに、重いだの、大きいだの余計なことを。知らん顔して外見ちゃおう。
 あれぇ、いいにおい。久しぶりのエビだぁ。太るからって、この頃あんまり食べさせてもらえなかったけど、今日は特別だ。オーブントースターで焼いたエビは格別においしいんだよ。ヨダレが出ちゃう。まだかなぁ。お得意のトースター開けにも挑戦出来るし、大好きなエビは食べられるし、一石二鳥…。 もういいや、開けちゃおう。お皿を出す時がスリリングなんだよ。見てみて! 熱いところに触らないように、ひっくり返さないようにしなくちゃぁいけないんだ。うまくいった! …ちょっと、まだ熱いな、もう少し待ってから… タ・ベ・ゴ・ロ、おいしーい、ほっぺが落ちちゃう。一気に食べちゃった、ちょっとお行儀悪かったかな。いいや、いいや、おいしかったんだもん。それに、いいビデオ撮れたでしょう?
 みんなは人間に近いネコって言うけど、僕は青木家の一員なんだぞ。一丁前なんだ。なぜだかしらないけど、僕がこの家に来て、悪い事もいい事に変えちゃったんだって。お父さんの病気も、僕の毎日のマッサージで。おばあちゃんの病気も、お母さんが僕のキーホルダーを病院の枕元に置いておいたら良くなって、退院して、自分のことは自分で出来るまでになったんだって。お母さんが具合の悪かった時も僕がそばにいて治ったんだ。もっとあるんだよ。僕のキーホルダーをあげた人の家にもいい事がいっぱい起こっているんだって。お母さんは僕には不思議な力があるって言ってるけど、僕はみんなが元気で暮らしている家がいいなーぁと思っただけなんだ。それが利いちゃったのかな。けど、いい事だよね。僕も役に立てて。
 僕もお母さんの友達の家からここの家に来てすっごく幸せだし、人間社会は難しいことがたくさんあるみたいだけど、みーんなが幸せになれば、言う事なしだよね。 そうそう、この間、僕の写真を撮ったらネコの霊が写っていたんだ、2匹も。家中でめずらしいって大切にしてるんだ。あっ! 今お母さんが出してきた、その写真。どこどこって、写ってるでしょう! 捜せた? 何、借りてくって? いいけど、ちゃんと返してね。これも僕のせいで起きた不思議な現象かなぁ。このネコちゃん達、僕の知り合い? 何か言いたい事あるのかなぁ。僕にはそこまでわからないよー。
 玄関先に置いてある石に顔が付くっていうのも、僕が来てからなんだって。なーんでもない石なんだよ。だけど、ある日、気がつくと何かの顔に見えるんだ。犬だとか、カエルだとか、怒った顔とか、泣いている顔。不思議だよね。僕はそこまで、関知出来ないけど。
 でも、今のところ、幸せ一直線だから。このままの僕で暮らしていくつもりさ。
 えっ! もう不思議研究所の人は帰えるの。気を付けてね。



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